――その「聞ききる」ということですが、それはやはり、単純に治療して、体の調子をよくすると言った以上の目的がそこにあるためでしょうか。

嵩原:うーん。具体的にというと難しいんですけど、やっぱり「先入観を持つな」っていうことですね。先入観を持つなということと、あとは、やっぱり末期の患者さんに多いですよね。比較的、そんなに高齢じゃなくて末期の患者さんがいるんですけど、その人に対して必要なのは治療はもちろん丁寧にしますけど、アドバイスというよりも、その人の心の動きを素直に受け止めるというか。
今、まさにそういう患者さんがいるんですけどね。その患者さんの不平不満、悩み、そういうのを聞くと。で、何かアドバイスする必要もないと思うんですね。つまりカウンセリング的なことですね。これからのドクターには多分カウンセラーのような役割が必要だと思うんですね。カウンセラーっていうのは、自分はしゃべらないですねよね。要するに、話の途中で絶対意見しないんですよ。で、ただ、聞いて聞いて聞いて、聞くだけ。で、変わるのは、相手が勝手に変わるんですね。だから、そういう要素はとっても大事だなっていうふうに思ってますね。

――そういった研修医の方を目指すべきところに導くために、先生自身が研修医の方と向き合うときに心掛けていらっしゃることは何なのかなというふうにお聞きしたいんですけども。

嵩原:軌道修正してあげるということでしょうか。例えば、ある方がアルコール依存症で病気が治りました。じゃあもう自宅に帰しましょうって話になりますよね。帰しましょうと言って、帰すのは簡単なんですね。でも、またまた飲んできて、何かまた問題を起こしたりする。そうではなくて、例えばどっかの断酒会なり、この専門の病院につなげるというふうに、あえてそう思わない研修医もいるんですよね。だから、やっぱり端々に帰してしまって、もう「この人しょうがないから」というふうなことを思ったりもする。それには「そうじゃないですよ」と言ってあげたり。療養に来るのは、これが最後にしてあげるようにした方がいいんじゃないかと言ってみたり。

嵩原:いまの一番の問題は、研修医個人が患者さんと、どういう接し方をしてるとか、どういう話をしてるかというのは、なかなか分からないんですね。僕は今、ひとりで患者を診ることないんですけど、昔は、みんなで回る時間以外に、担当の患者さんとどんな話をするとか、そういうことが患者とのつながりを深めてたので、その部分が大事だと思うんですけど、その部分に僕は十分にタッチできてないんです。ずっとついとくわけにいかないんでね。だから、それが少し足りないかなとは思っていて。

――また、そこは試行錯誤しながらということですかね。

嵩原:そうですね。

――次に、これから医師を目指す方に一言アドバイスというか、メッセージがあれば、いただきたいなと思います。

嵩原:何か難しいですね(笑)うちの病院というのは、学生がけっこうマッチングに来ますけど、その人たちに伝えたいことというよりも、「まず来て、病院をちゃんと見て、研修医について回ってください」ということを言いたいんですが。
そうするとやっぱり雰囲気が実際、生で分かりますし、うちの病院の研修医たちは余裕があると思うんですよ。いわゆる、沖縄には有名な県立中部だとかいろいろありますけど、自分だけの時間もあって、毎日21時、22時まで遅く残ってるわけじゃないので、やっぱりそれなりに自分で考えて、かといって指導医のやっていることを真似するだけじゃなくて、要するに主体性を持って、こうしたいということをやっているので、それを見に来てほしいというふうに思いますけど。

―なるほど。

嵩原:やっぱり、一番伝えたいことといったら、僕は「患者を診るんじゃなくて、人間を診てくれ」ということを言いたいと思います。

―今度は先生ご自身のことをお伺いします。先生ご自身が目指す医師像とか、もしくは夢はなんでしょうか。

嵩原:夢ですか。ちっちゃい夢で言えば、うちは内科の数がやっぱり少ないですし、内科の研修をさらに充実させたいというふうに思っています。で、新臨床研修制度が始まって、もう何年になりましたかね、結構なりますよね。7年で、うちは大体10人ぐらいづつ研修に人が来ているので、もう多分50人近く卒業生が出てますね。いま、沖縄協同病院に残ってる人もいますけど、残ってない人もいて。で、いろんなところで活躍してくれて。卒業生が今いろいろ活躍しているんだけども、初期研修2年間過ごしたこの協同病院での初期研修が、私の礎ですと言ってくれたら、多分それが一番幸せなことじゃないですかね。僕らが2年間、育てたというか、付き合った研修医がどっかで活躍してくれる。別に活躍しなくてもいいんですよ。活躍しなくても、医師としてそれなりに、それなりの誇りを持って生きていってくれたらいいなって。それが僕の夢ですね。