―では、まず最初に沖縄協同病院での研修の特徴についてお伺いしたいのですが。

嵩原:やっぱり、そこからなんですね(笑)

―まず初めは(笑)

嵩原:特徴はですね、民医連の病院だったらどこでもそうなんですけど、科の垣根がないというか。医局の雰囲気もそうですし、朝会というのを8時半から9時までうちでやってるんですけど、それが終わったら、もう各研修医もそうですけど、研修医でない人たちもコンサルトしたいこと、他の科にワーっと集まるような雰囲気があるんですね。垣根がないと。で、非常にコンサルトしやすいと。だから多少温度差があるとしても、みんなでやっぱり研修医を育てていこうという雰囲気があるんだと思います。あと、うちは月に1回研修医評価ということで、研修委員会っていうのをやっています。

嵩原:その中で、型通りの「症例が何件」あったとか、「どういうカリキュラムでやりました」とか、そういうんじゃなくて、いま印象に残ったこととか、困ったこととか、で、共有したいこととか、それから、スタッフとか指導医への要望とかね、そういうのを主に研修医に言ってもらうようにしてるんですね。そうするとそこで広がって、あと、指導医会議とか、医局会議、もっと上の会議でもそれが話題になって、けっこう解決するんですね。この間でしたかね、今月の研修医委員会で出たのは、救急を回ってる研修医が、暴言とか暴力を振るうような患者さん、そういう患者さんが時々いるんですが。その患者さんに対して、どう対処していいか困るというふうな意見が出たんですね。それを何とかしないといけない。対処としては、実はものすごく“型通りのマニュアル”はあるんですよ。「困ったら上に相談する」とか、「警察に届ける」とかね。マニュアルに具体性がなかったので。「じゃあ、これ、具体化しなきゃいけないんじゃないか」ということで、いま、結構それで医療安全管理室とか、いろんな科のドクターを巻き込んですすんでるんですね。だから、特に研修医が言葉を発すると、医局全体、病院全体の問題になって解決がすすむというような風土がうちにはあると思います。

――なるほど。研修医の意見がボトムアップされやすい環境があるということですね。

嵩原:はい、そうですね。

――研修の特徴として、今、おっしゃられたようなことがあると思うんですが、例えばこのHPを見られている研修医の方々に研修のコンセプト、理念を分かりやすく伝えるとすれば……。

嵩原:そうね、理念ですか。やっぱりありきたりですけど、「いち患者でなくて、いち人間として」って。単純なことを言えば。そういうことだと思いますね。

――「いち患者ではなく、いち人間として―」いい言葉ですね。

嵩原:実はけっこう難しいんですけどね。患者さんはいろんな人がいますよね。いろんな患者さんと接することで勉強になることがいっぱいあると思うんですね。で、例えばお金に困ってる方とか、そういう患者さんもいらっしゃる。そういうことに関しては、すごく親身になるんだけれども、アルコール依存者の方、お酒をすごい飲んで、しょっちゅうしょっちゅう病院に来る方もいる。今回は吐血で来ました。で、今回は潰瘍で来ました。今回、ただダルくなって来ましたっていう方がいるんですけど、そういう人もやっぱり同じ患者さんなんですね。ただ、やっぱり見てると研修医は若いので、お金に困ってる患者さんに対する接し方とこのアルコール依存症の患者さんに対する接し方が違うんですね。つまりアルコール依存症の患者に対しては「ちょっと自業自得じゃないか。」と、そう感じているんですね。

――「自己責任ではないか?」という風に感じてしまっている?

嵩原:自己責任というか、自業自得じゃないかっていう。研修医と話していると何かすごい言葉の端々で私たちに投げかけるので、若いからしようがないと思うんですけど、それは、逆ではないかと。ある意味、狭い意味で言って正義感があるのかもしれませんけど。きっとそうじゃないと思うんですね。だから、僕は医者になって、20年以上たちますけど、何を一番学んだかっていうと、一番学んだことは、「自分の価値観で量らないこと」ってことですかね。自分の価値観っていうか、自分の基準に当てはめないこと。で、自分の価値観、基準がすべてではないと。だから、研修医に求めることというのは、いろんな指導があるんですが。うまく医療指導をできるドクターになるのも大事なんですけど、それよりも一番大事なのは、「聞ききる」というか、患者の言葉に耳に傾けること。例えば、話の途中で口を挟みたくなるのをぐっとこらえて、患者の訴えを聞ききると。「この人の価値観はおかしいんじゃないか?」とたとえ思っても、100歩譲って聞ききると。そういうドクター。ドクターと言うよりも、人間になってほしいなというふうには思っていますけど。