――まずはじめに、健生病院の研修の特徴から教えていただきたいと思います。

杉谷:民医連加盟の病院は、小規模な病院が多いので、大体どこでも一緒かもしれませんけれど、やっぱり“小さいがゆえのよさ”みたいなのを出してあげられればなあと思いますね。

大きい病院だと、例えば内科一つを取っても、心臓、循環器であるとか、胃腸の病気は消化器であるとか、肺の病気は呼吸器だとか、糖尿病は内分泌だとか、いろいろ科によって分かれてるもんなんです。だけど、小さくなればなるほど、内科の垣根は低くなります。

で、ウチぐらいまで小さくなってくると、たいがい内科と外科、あるいは小児科、そういった診療基本3科をそろえているんですが、そういう科ごとの垣根もずいぶん低くなっています。

小規模だと、日ごろからみんな顔も知っている人たちばっかりですし、内科、外科、小児科というところでの垣根もないから。それによってどういうメリットがあるかと言うと、たとえば、内科の研修期間中に、たまたま受け持った患者さんが【急性腹症】おなかの悪い人で、もう手術しなきゃいけないぐらいになりましたと。
あるいは、受け持っていた患者さんにたまたまガンが見つかって、それを手術しなきゃいけなくなりましたとか、そういう話になったときに、当然、内科の研修中だから、手術までは入れないものなんです。当たり前ですね。
外科だったら、外科の手術はするけれども、その後、元気になったら内科に返して、あとは知らないって話になるわけですよね、外科期間中だから。

だけど、これぐらいの規模の病院だとどういうことができるかというと、そのまま、その人の手術にまで付き添って、外科になってもその患者さんを受け持っていただいて、最終的に患者さんはリハビリして元気になってっていうことができるんです。

要は内科、外科そういった部分に垣根がないだけに、「その人がそもそも手術が必要な状態かどうかの診断」から、初期治療、手術、今度は術後の回復、患者さんが元気になって家に帰るまでを診るわけです。下手すると、その後もその人が往診しなきゃいけない状態になったら、往診の治療まで。そういったところまで含めて一貫的に流れとしてきちんと研修できるというのが、やっぱり魅力かもしれませんね。

それが健生病院は、内科、外科、小児科総合研修という形でやっていて、内科研修中も必ず週1回は小児科外来に入って、研修を続けますし、期間を通じて手術が必要な患者さんには必ず研修医に呼びかけ、手術にも入っていただくということにしています。それはもう、内科、外科、小児科、ずっと流れでやっていこうという話にしています。

単に期間で区切ると、その期間はやるんですけれども、それが終わると忘れちゃうんですよね。人間ってそんなもんですよ(笑)
例え小児科3カ月やったとしても、その3カ月が終わってしまうと、やっぱり分かんなくなっちゃうんですよね、ずっと診なければ。外科もそうです。3カ月集中的に手術に入ったとしても、その後に手術に入らなければ、せっかくやったことも全部水の泡ですから。少なくとも2年間はしっかりそれを継続してやっていただく。
そうは言っても、ウチも管理型ではあるけど、足りないとこは外の病院での研修もあるので、そういった意味では、ウチにいない期間はやむを得ないんですが、当院で研修する間においては、それを必ず継続してやっていただくというのが、売りと言えば売りですかね。

――それはもう、明確に地域で役立つ総合医育てるという目標に沿ってるわけですね。

杉谷:そうです。我々の研修の目的というのは、もともとは、竹田市に竹田診療所というのがあって、そこは医療過疎地域なんですが、そこで1人ででも診療所長を担うというのが、一つの目標になってますから。

それが、我々の時代もそうだったんですけど、5年目の若手医師が診療所長を担えるような力量をつけるというのを一つのコンセプトにやっています。

では、それができるためには、どんな力が必要なんだと言ったときに、たとえば外科でも、怪我をして血を流して来る人は当然いますよね?そこでは、やはり縫ったり、切ったりという手術はできないといけません。ただ、そういったところは初期研修に組み込めないので、3年目の後期研修に今は組み込んでいるんですが、とりあえず初期研修の2年間は内科、外科、小児科に関しては、“そこそこの力量”を身に付けていただきたいということにしています。

――先生ご自身が、研修医の方々に指導する際に、何か心掛けていらっしゃることというのはありますか?

杉谷:指導医なんて考えてみると、大したことできないんですよ。対して知識もないし、大した技術もないですよ。それでも僕らなんかが、お医者さんとしての人生始まったばかりの研修医に何ができるかなというふうに考えると、たとえば研修医の先生というのは、学生期間が普通大学よりもちょっと長いですよね。それでしかも浪人までしていると、卒業したらけっこういい年齢です。だけど、¨何も知らないっていう状態¨で来られます。
下手すると、「その年齢でその立ち居振る舞いではちょっとまずいんじゃないの?」っていうことも往々にしてあるので、まず社会人としてきちんと当然のことは身に付けていただくと。やっぱり医師としてのスタンスとか、お医者さんと言っても、やっぱり一人の社会人じゃないですか。

言ってしまえば、朝、新人であれば、早く来て、みんなにあいさつして回るとか、そんなことも含めてそうです。仕事に対して責任を持って取り組むと。非常にもう当たり前のことなんだけど、その当たり前のことをきちんとやれるようにしてやるのが、一番大事かなというふうに考えますね。

知識や技術も確かに大事なんだけれども、我々がつくろうとしているのは、たんに医学知識を持った人をつくるんじゃなくて、やっぱり“お医者さん”をつくりたいんですね。

お医者さんに求められるものは、それは、医学知識や技術は当然あってしかるべきですが、それ以上のプラスアルファのものがないと、お医者さんにはやっぱりなれないだろうと思うんです。
たとえば、患者さんが話してても、さっぱりコミュニケーションが取れなければ困りますよね。病気しか診ないお医者さんって患者さんからしたら困るじゃないですか。
なので、医学知識、技術はもちろんだけど、それ以上に人としてやっぱり厚みがある人間になってほしいですよね。それをどうやったらできるのかっていうのは、なかなか難しいんですけども、そこ、一番大事なことやなと思います。

正直言って、知識や技術というのは、人によって多少むらはあるけども、10年医者をやってたら、大体みんな“そこそこ”になるもんなんですよ。
僕は今、16年目になってますけども、15年、16年と医者をやっていれば、やっぱり“そこそこ”には達すると。もちろん、もっとすごい人はいっぱいいるんだけど、自分なりにそこそこのレベルに達することはできる。
15年目の先生と、17年目の先生がどれぐらい違うかと、ほとんど差がないですよね。だから、ある程度の期間やると、知識や技術というのは、いつか一定のレベルに達する。だけど、その人がそもそも医者として高みに登るというかな、医者としてその職業を全うしようという、その社会人としての大事な気持ち、ここが最初にできていないと、やっぱり駄目なんですね。いくら年月を積み重ねてても、どうしようもないわけです。

だから、最初のスタンスとして、医者はかくあるべき、社会人というのはかくあるべきだと。そこをきちんと身に付けさせてあげれば、知識や技術については、あとは時間が解決していくと僕は思っています。