――はじめに、こちらの病院での研修の特徴などを教えていただけますか。

中野:やっぱり僕らのアイデンティティにとってすごく影響の大きいところは、離島診療所の医療を支えるというところから出発しているっていうところがあって、僕らぐらいまでの世代のところでは、ものすごくこの影響というのが大きいんですね。島で恵まれていない環境の中で、困った人たちのために何ができるのかっていうことを考えながら、そこで発生している医療の問題をどう対処していけるのかっていうこと。自分たちがこの医者の仕事をして、それをやるための研修っていうところから出発したっていうところが、一番の特性じゃないかなと思います。

当然、困っている人たちがどんなことで困っているのかとか、大変な環境の中で医者としてやれることって何なのかとか、そんなことも自分たちの力にしないといけないというふうに思ってはいます。

ただ、最近はそこから出発しながらも、都市部の病院になってきたので、特に救急なども含めて、かなり重症の方をこの地域で受け入れる病院になってきています。
ある意味、離島というところもにも通じるところがありますけれど、どんな大変な状況の方でもまず自分たちで受けて、その中で自分たちの総合力を発揮し合ってやっていくという、そういう病院としての性質ですね。それを生かした研修をこの地域の中ではやってきています。

――今、離島医療ということをおっしゃってたんですが、現在、離島のほうに研修医の方を派遣するということも、積極的にやられているということなんですね。

中野:そうですね。それは、ぜひ行ってほしい。行きたいという志を持った人には、ぜひ行ってほしいなっていうふうに思ってます。

――離島診療所での研修っていうのは、どういったような特徴がありますか。

中野:そうですね、基本的に医師の体制という意味では、昔とそんなに変わりません。
診療所には医師が2人しかいないっていう状況なんで、働かないといけませんし、たぶん1人が持つ責任ってのは、すごく大きくなってきますね。
やっぱり、1人で判断しないといけない場面っていうのが多々出てきます。
当然、医師2人で相談はしていくんですけれど、かなりの部分で独力でもやれなきゃいけませんね。

それが一つの特徴でしょうか。ただ、それを終えると自分の大きな自信にもなっていくっていうところが、もう一つの特徴というところでもあります。
あと、やっぱり診療所っていう一つの小さいけど、組織ですよね。
地域の患者さんとの関係というところでも、一つの“世界”を任されて、そこでの責任ある人間として仕事を全うできる、この研修期間を全うできるかどうかというのが、すごくその後の自信につながっていくって思うんです。
そういうことを若い時期に経験できるって大事なんですよ。現在、離島に行っている先生が5年目の先生で、所長を務めてるわけですが、そういう若い世代の先生が行って経験して来れるっていうのは、大きな特徴かなと思います。

――先生が若い研修医の方々を指導する際に、心掛けられていることはありますか。

中野:そうですね。やっぱりスタートのところは、当然医学的なことがどうしても若い先生たちの関心というところにとって大きいので、そこには十分応えていくようにしないといけないんですけれど。やっぱり患者さんが抱えている問題というのは、医療、医学的な問題や病院の中で見えている問題であったり、それだけじゃなくて、その背景を持っています。家族であったり、経済的な問題であったり、社会的な問題だったり、そういうことが最初からあるはずなんですね。

そういうことに、医師としても気付いていないといけないし、そういう部分をトータルで見て、対処をするような力も持っていないと、本当にその人を救えるかどうかっていうところが大きくかかわってくる話なんですね。

例えば、入院してきて、よくなったと思って帰しても、もし別の問題や背景の問題で結局病気は治らないということはたくさんあるわけですよね。そういうことが最初から認識できていないと、いい仕事できないんじゃないかということを、若い先生たちにもきちんと最初から伝えていくことが大事じゃないかなと思っています。

最近、救急とか集中治療を一生懸命やっている先生たちも一緒にカンファレンスを研修医向けにやったりもするんですけど、やっぱり若い先生たちなんで、重症とか救急とかそういうところの管理運営ができるのか、といった部分に一番関心が向くとこですけど、
なぜその人がこんなに悪くなってきたのかっていうことを、“背景も含めて診る”っていうことがむしろ大事なんじゃないのかっていうことを、事有るごとに言っていくということが、大事なんじゃないかと思っています。