——では、まず最初にこちらのくわみず病院での研修の特徴について、教えていただきたいのですが、どういった特徴をお持ちでしょうか。

赤木:やはり最大の特徴は、総合内科診療ということですね。大学病院などでの今の医学教育のメインは、縦割り方の教育なんですね。例えば、僕らが大学を卒業したころというのは、みんな専門の医局に入ってたんですよね。そこで、専門分野を学んでた。で、大学病院っていうのはどちらかというと、「臨床と教育と研究」という使命がありますので、この研究が非常に重視される部分があります。それはそれで大切だと思うんですけど、そうなると、「病気から医者が発生」する形になるんですね。これちょっと難しいんですけども。だけど本当の医師っていうのは、「患者から発生」する。あるいは「患者のニーズから発生」しないといけない。患者のニーズが一体どういうところにあるのかと。それを本当に分かるには、こういう小規模、中規模病院に来て、患者さんと実際、向き合って診察をして、そこで初めて分かるので。そこで何を求められてるかっていうようなニーズを実際に肌で感じて、そこの部分を研修していく。そういうふうに勉強していくということです。大学にいるとどうしても、例えば循環器科であれば、心臓のところの部分だけをしっかりやっていくというふうな形になって。で、心臓のことはもう何でも任せろというふうな医師が育つわけですけど。だけど、心臓以外については、「うん?」というような状況になってしまうんですよね。で、心臓のニーズと言っても、心臓の病気っていうのは虚血性心疾患で、狭心症と心筋梗塞が本当に一番多くて、そのほかの病気っていうのは、そんな多い病気ではないんですね。で、逆に言えば、だから、そこの狭心症の部分だけを一般医はきちんと診れるようになれば、一応、それなりの循環器レベルはあると。消化器についてもおんなじ、呼吸器とかについてもおんなじで。そういう高度専門、これは三角形があるんですけど、これは三角形。ここが1、3次レベルの専門医療、2次レベルの専門医療。ここが一般レベルとすれば、こういう縦型の研修を行うのではなくて、横型の研修ですね。ここの部分を幅広く診て、で、必要なときには三次レベルの医療が必要だといって判断した場合には、ここの部分から行ってもらうと。で、またもと戻ると。この横断的な部分ですね。すべての科を含む横断的な部分、これがわれわれ総合診療医に求められるニーズ。まずは、患者さんの相談に乗るということ。僕自身は、特定の専門医とかではなくて、そういう総合診療的な部分、総合診療も最近は専門コースならあるんですけど、患者さんのニーズから自分が育っていった医者だっていうふうに自負してるんですね。

——だからこそ、総合的に患者さんを診れるような医師を育てていくという。

赤木:はい、そうこうとですね。

——その中で先生自身が研修医を指導する上で心掛けていらっしゃることなどがあれば、教えていただきたいのですが。

赤木:2004年ぐらいからずっと研修指導に携わってきましたけど、最初の指導はどうしても、僕から研修医へという一方的な指導が非常に多かったんですね。最近は逆に、研修医にやらせるといいますか、能動的にさせる。従来はどっちからかというと、研修医にとっては受動的な研修になってたんですね。つまり僕からの受け身。ですけど最近は逆で、能動的な研修、つまり研修医にやらせて、それをやった内容についてはこちらで評価するというふうなやり方で。これは教育全般に言えることかなとは思いますけれど。

——先生自身が研修医だったころと比べて、たとえば研修の内容だったり、研修の姿勢、体制が大きくやっぱり変わってきてるんですね。

赤木:変わりましたね。僕が研修時代はあんまりいい言い方じゃないんですけど、どちらかというと「父性主義」。パターナリズムってよくいわれてたんですけど、上の先生が言うことがもうすべてだと。要するに昔の封建社会と同じで、お父さんの言うことがすべてだという世界だったんですね。だから、自分が意見を言っても、それがまず採用されることはない。上の言った先生の言葉がすべて、主治医がすべてだというふうな状況でした。最近ではもうそういうのは変わりまして、上の先生が言うのではなくて、まず、上の先生が研修医の言うことを聞くということ。そういうように大きく変わってきてるんですね。

——この変化自体は先生は、ポジティブにとらえられてますか?

赤木:はい。まさしく、これこそ本来やるべき医学教育ですね。医学だけではなくて、ありとあらゆる全般的ないろんな部分での教育ですね。臨床教育もそう、患者さんへの教育もそう。子育てにしてもそうだし、子どもに対する教育、すべてにおいて、このいわゆる能動的な教育はやはり取り入れていかないといけないんじゃないかなという感じがします。

——研修医の先生にお話聞いていて、医局は一言でどんな印象ですか?っていう質問をさしていただいたときに、「低反発枕」だということをおっしゃってたんですね。要は、フワッと優しい、やわらかいというようなイメージだというふうに。そういう医局の雰囲気づくりは、意図的にやられてるのか、それとも自然にそうなっていったのかっていう……。

赤木:これに関しては、実は、ちょっといろいろ歴史がありまして。やはり、つい4〜5年前ぐらいまでは、医局の雰囲気は決していいとは言えない状況だったんですよね。で、指導医の鈴木先生っていう先生が入ってきた頃から、だんだんと医局の雰囲気がだいぶ良くなってきて。そこで、医学教育っていうものを、医学だけでなくて、教育というものがどういうものであるかというのを、いろんな勉強会やワークショップに参加して、僕自身が学んできた。「なるほど。これが人を教えるっていうことか」というふうなのに気付いて。それでそういう雰囲気と流れがちょうど重なって、いい感じになってきたんじゃないかなっていうことですね。意図的な部分が半分、自然が半分っていう感じじゃないですかね。